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ジャズピアノレッスン

キースジャレット名曲紹介【3】 | ジャズピアノのはじめかた

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この記事を書いたのは・・

底冷えする日本の冬の夜、本を肴にお燗をいただくという寂しいおひとり様暮らしを満喫しております。みなさまは如何お過ごしでしょうか。多田です。
いやはや、聡明な読者のみなさまのこと。酩酊した状態で本など読めるのか?とお思いになられたはずです。

えぇえぇ。自分では読めていると自負していたんですが、この間いつものように酔いどれ読書をしていると「なーんか見覚えあるぞこのタイトルのフォント!」と、妙な既視感が襲ってきまして。
もしや、と思い本棚を漁ってみると…あるんですよ。手元にある本と同じ本が。

読めているか以前に手に取った記憶すら入ってないのですから、お酒というのは恐ろしいものです。

フォント(ほんと)にあった怖い話、ってね。えへへ!

えぇ、お後がよろしいようで。
まぁ、面白い作品に出会った時「記憶を無くしてもう一度読みたい!」とおっしゃるような方にはイイんじゃないでしょうか?酔いどれ読書。

キースジャレット名曲紹介

さぁさぁ。引き続きキース・ジャレットの歩んできた轍を追っていきましょう。

前回が60年代編としますと、今回からは70年代編。現在のキースを形作った重要な年代で、ECMと繋がるのもこの頃。

マイルス・デイビスとの邂逅

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チャールズ・ロイドの元から離れたキースの次なる舞台はマイルス・デイヴィスのグループでした。しかし、当時「Bitches Brew(‘70)」を発表し、次世代のジャズの形である「フュージョン」を確立・傾倒していたマイルスの求めるサウンドはずばり、エレクトリック。

キースは自身のステップアップに確かな手応えを感じると同時に、デビューより一貫してアコースティックジャズの世界にいたことでフュージョンが掲げるエレクトリックサウンドに当初は違和を感じていたようです。

キースジャレット名曲紹介 Miles Davis – Live At Filmore East(Friday Miles)

改めて見ると凄まじい面子。小学生が雑誌に投稿する「ぼくがかんがえたさいきょうのサッカーチーム」みたいです。

さてさてお気づきでしょうか。キーボードとオルガン、鍵盤が二台いるんですよね。

えぇ。キースと並んで現代ジャズピアニストの巨頭、チックコリアも参加しているのです。

左のオルガンがキース、右のローズがチックです。
若かりし二人が音でもって肉薄する貴重な録音物。ありがたや。

このライブ盤は1970年、ニューヨークはフィルモア・イーストにて行われた4日間のライブを収録したもので、オリジナル盤はLP2枚組の全4曲入り。つまり、1日分を1トラックに押し込んだというサプリメントばりの濃縮っぷり。聴くのに結構な体力を使います。

CDリイシューでは細かくトラック分けされてますが、そもそもメドレー形式で曲間などあって無いようなものなので途中から聴けてもあまりしっくり来ないという。

ただ、一度でいいのですこぶる体調が良い時にこの「Friday Miles」は通して聴いて頂きたいです。ビッチェズ・ブリューのイントロに入った瞬間のカタルシスったら半端ねぇっスから。マジで。語彙力が無くなるくらいにはヤバいっス。マジで。

この「カタルシス度」で言えば私が一番好きなマイルス作品である「アガルタ(’75)」「パンゲア(‘75)」を引き合いに出したいのですが…。これも長くなるのでまた別の機会に。

さて、マイルスバンドに加入する前はこのサウンドにあまりいい顔をしなかったキースもチックという好敵手にめぐり会えたからでしょうか。こういったプレイアプローチもあるのだとすんなり受け入れたようで、その後のリーダー作品ではエレピを積極的に用いています。

また、ここでキースにとってもうひとつ重要な出会いがありました。現在まで続くトリオのドラマー、ジャック・ディジョネットとの出会いです。

キースジャレット名曲紹介!いざECM!…に行く前に。

これまでキースのサイドワークしか紹介して来なかったので、彼の初期リーダー作について触れましょう。時間は少し遡り、1967年。チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンとのトリオ作を発表します。

キースジャレット名曲紹介 Keith Jarrett – Life Between the Exit Signs(‘67)

キース入門盤としてはこれが筆頭なんじゃなかろうかと思います。

後述する「ケルン・コンサート」や「スタンダーズVol.1&2」も確かにいいのだけれど、ハマらない人はそこで諦めてしまう気がするんですよね。あまりライトに聴ける作品ではないですし。

その点、このデビュー作はキースらしさの基盤は構築されつつもまだオーソドックスな質感で聴きやすい、とっつきやすいのではないかと思うワケです。エヴァンスぽいテイク(Everything I loveとか)やセシル・テイラーよろしくなテイク(Love No.2)なんかもあったりして。

アメリカンカルテットから名盤紹介

私が初めてキースに触れたのは実はECM作品ではなく、通称「アメリカンカルテット期」の作品でした。基本は先のチャーリー・ヘイデンとポール・モチアンにデューイ・レッドマンを加えたカルテットです。作品によってゲストがいたりしますが・・・。
百聞は一見に如かず。こちらです。

ジャズピアノの名盤 Keith Jarrett – Treasure Island(’74)

どうでしょう。これまで聴いてきたキースのイメージには無かった質感ですよね。

私が初めて聴いた時はECMでのキースなんて知りませんから、「やたらファンキーなピアニストだなぁ」という第一印象だったんです。アフロだし、何や叫んではるし。

ただ、このヒッピーな雰囲気だと奇声も気にならないんですよねぇ。不思議とハマってるというか。レーベルもECMではなくImpulseです。フリー・ジャズの名門ですが、晩年はこうしたフュージョン寄りの作品をいくつか残しています。

というわけで、全体的にメロディアスでキャッチーなジャズロックなので、4ビートのいわゆる「ジャズ」が聴きたいという方にはおすすめしませんが、キース入門盤としては諸手を挙げてオススメしたい作品です。後述する「My Song(‘77)」が気に入った方にもいいかも。

お待たせしましたECM

長らくお待たせしました。キースとECMの邂逅です。

時は71年。マイルスバンドに従属してヨーロッパツアーを行っていたキースはひとりの男と出会います。その男の名はマンフレート・アイヒャー。ご存知、ECMの生みの親です。

時間にしてわずか3時間のミーティングの中でアイヒャーはいくつかの提案を示しました。

その中のひとつに「ソロピアノによる作品制作」というものがありました。

ジャズピアノの名盤 Keith Jarrett – My lady, My child (Facing you ’71)

この頃、キースはこのようなスタイルでソロライブを行っていたのですが、所属レーベルには気に入られず、契約を切られてしまっていました。

そんなキースのポテンシャルを見抜いたアイヒャーと自身の音楽性を認め、プロデュースしてくれる手腕を欲していたキース。意気投合するのに時間はかからなかったことでしょう。

そして同年、キースはこちらのソロピアノ作品「Facing you」ジャック・デジョネットとのデュオ(!)作品「Ruta and Daitya」をECMより発表します。

キースジャレット名曲紹介 Keith Jarrett / Jack Dejonette – You know, You know (Ruta and Daitya ‘71)

初期ECM作品は現在のような静謐なイメージにある作品の他にフュージョン寄りの作品を残しています。第1回で取り上げたチックの「Return to forever」もそうですね。
フュージョンといっても、よくある安易なイージーリスニング的アプローチではなく、純粋にエレクトリックサウンドや他ジャンルを取り入れてジャズの世界を押し広げようと言う気概が感じられるフュージョンです。

こうしてアイヒャーのプロデュースの元でキースは翌年(’72)より「完全即興によるソロピアノ」に大業に挑戦していくことになるのですが…。これはまた次回。
次回は完全即興ソロピアノ、ヨーロピアンカルテット、そしてスタンダード・トリオについてです。
こちらからどうぞ

この記事を書いたのは・・

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多田大幹
1991年生まれ茨城県出身。
11歳の頃よりギターを、高校時代よりジャズを学び始める。
2010年、洗足学園音楽大学に入学。ギターを道下和彦氏、有田純弘氏に師事。作曲を香取良彦氏に師事。
2013年度特別選抜演奏者に認定、2014年優秀賞を得て同校を卒業。
同年亀吉レコードより1st EP「the Portrait of Lydian Gray(クリックでitunesページに)」を発表。
ECMを中心としたコンテンポラリージャズを中心にアルゼンチン音楽やシカゴ音響派など豊かなバックグラウンドから得た作編曲能力には定評がある。

でした。

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