部屋とYシャツとECM Vol.5 - ピアノと奇声とKeith Jarrett その4 – | ジャズピアノのはじめかた

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部屋とYシャツとECM Vol.5 - ピアノと奇声とKeith Jarrett その4 –

time 2017/02/22

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看板記事です、はじめての方はまずお読みください

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部屋とYシャツとECM Vol.5 - ピアノと奇声とKeith Jarrett その4 –

今冬、日本列島を襲った記録的大寒波も翳りを見せ始め、出会いと別れと花粉の春が訪れようとしています。
よく初対面での会話に「どの季節が好き?」という天気の話題に次いで苦し紛れなネタがありますが、花粉症持ちの私にとっては答えにくいものがあります。
だって夏は暑いし、冬は寒いし、春秋は痒いんですもの。

日本は四季の移ろいが美しい国だともっぱらの評判ですが、花粉に侵されている人間は嗅覚が奪われ、嗅覚が奪われることによって味覚が落ち、目の痒みによってろくに景色を楽しむこともできないワケですから、四季のありがたみなどあったもんじゃありません。
きっとこういった花粉ほどの些細な澱が積もるに積もり、若者の愛国心が失われていくのでしょう!

そして有望な人材は次々に諸外国へ移住し、日本は衰退の一途を辿るのです。
著しく下がった国力につけ入られて次々に奪われていく領土。
残された国民は心の奥底に眠っていた大和魂を再燃させ蜂起するが、時すでに遅し。
ひとり、またひとりと己の、国の無力さを呪いながら息絶えてゆく。
やがて全てを失い、絶望した老人が大きな大きな屋久杉に斧を突き立てて叫ぶのです。
「お前さえいなければ!」

~続かない~

花粉への恨みを募らせつつ、部屋とYシャツとECM始まります。

スタンダーズトリオ

God Bless The Child — Keith Jarrett Trio
God Bless The Child by Keith Jarrett Trio from "Standards Live"

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さて、かつてないほどに謎な導入でしたが今回もキースについて記していきたいと思います。
前回までに紹介してきた70年代のキースは自作曲や完全なる即興に重きを置き、独創性を極めていきました。
そんなキースが次のステージとして選んだのは「スタンダード
当時のジャズファンたちも「なぜ今更?」と訝しんだことでしょう。
これにはキースなりの考えがあったのです。

キース、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットの3人が初めて顔を合わせた場は77年に発表されたゲイリーのリーダー作「tales of another」でのセッションでした。
リンクはこちら

このアルバムはゲイリーのオリジナルによって構成されており、今のスタンダーズトリオをイメージして聴くと面食らってしまいそうな内容ですが、ECMらしい静謐さや緊張感に富んでいる佳作です。またディジョネットのシンバルワークが大変美しい。硬質な音色ながら柔軟なカラーリング。ドラムに皮モノなんかいらなかったんや!

えぇえぇ。暴論が過ぎました。
この録音から6年後の1983年、キースはアイヒャーの助言を受けてゲイリーとディジョネットを招集し、スタンダーズトリオを結成します。

アメリカンカルテットを率いていた当時、キースはオリジナルを演奏する事によって生まれる不自由さに悩まされていました。
それは新曲を書く度にメンバーに譜面を渡しては構想のプレゼンを行わなくてはならないということに起因します。

ジャズにおいて「作曲しましたぁ!」→「演奏しまぁす!」というプロセスは単純なようで複雑なのです。
通常、譜面上では即興性を殺さぬようにメロディーとコード、重要なリズミックアイディアなどをシンプルに記載していくのですが、バンドメンバーによる解釈の齟齬を噛み合わせるのがいやはや大変で。
細かくアレンジしてしまってはメンバーの個性や即興性を殺してしまいますし、手探りでセッションしていては終わりが見えない…。
ですので、未知なるオリジナルをメンバーとのケミストリーによって昇華させるためには作曲者の構想をしっかりと共有して綿密にリハーサルを重ねるほかないワケっすね。

キースもそんな七面倒くさい過程を踏まねばならない状況だったのですが、メンバーであるチャーリー・ヘイデンはドラッグによって調子の波が大きく、デューイ・レッドマンは譜面に強くなかった上にリハーサルにも出なかったそうで作品制作は円滑に進まなかったようです。

こうしてオリジナルを作っていくことに限界を感じ始めていたキースの頭にふと過ぎったのはスタンダードの存在でした。

スタンダードならばリハーサルを重ねずとも簡単に対話することができるし、幾多の経験を積み音楽性を高めた今の自分なら新しい次元のものに昇華出来るのではないか。
あっ。しかも今(80年代当時)なら誰もスタンダードやってないやん!ほなやったろ!

てな具合でキースはスタンダードに取り組んでいくことになるのです。
また、この頃からキースはクラシックも本格的に取り組み始めていたので、オリジナルを作る時間的余裕や切り替えが出来なかったそうです。

BWV846 WTC 1-01 Prelude & Fugue in C Jarrett 1987
BWV846 WTC 1-01 Prelude & Fugue in C 00:00 1a Prelude in C 01:54 1b Fugue in C Keith Jarrett 1987

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そして1983年1月。おおよそ1日半のレコーディングで生まれたものが「Standards vol.1」「Standards vol.2」「Changes」の3枚(!)です。
Standardsの2枚は言わずもがな、スタンダードをメインに取り上げた作品ですがchangesはフリーフォームの作品となっています。
驚異的な集中力で仕上げられた3作品の完成度は素晴らしく、このトリオの胎動をしかと感じることが出来ます。

慢性疲労症候群の発症

スタンダーズトリオ、ソロピアノ、クラシックへの取り組みなど80年代を全力で駆け抜けたキース。1996年、突然の病魔が彼を襲います。その名も「慢性疲労症候群」
私はこの病名を聞いた時「新型うつ病」的なモノを想像してしまったんですが、こちらも同様に診断が難しい病らしく、精神疾患などと混同されがちだそうです。
症状としては病名通り疲労状態が慢性化するというもので、具体的には微熱、頭痛、体の痛みが続いたり、思考力や記憶力が低下した状態が続くというもので、大変しんどそう。
これでは到底音楽へ向き合えませんから、キースは長い闘病生活を強いられることになります。

時は流れて1999年、キースはこのアルバムでもってシーンに復帰しました。

I love you porgy – The Melody at night , with you(‘99)

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自宅スタジオで録音されたソロによるスタンダード集で、闘病生活を支えてくれた愛妻へ捧げた作品です。妻への愛を、再びピアノに向かえることへの歓びを噛みしめるように紡がれる音楽。キースの数ある作品の中でも至上にロマンティックな1枚だと思います。
同年、スタンダーズトリオの復帰作「Whisper not , live in paris 1999」を発表。長いブランクを感じさせない一体感に往年のファンはキースの完全なる復活を確信します。

病気が回復してきた頃、キースはゲイリーとディジョネットと共に「リハビリ」的なリハーサルをしたそうです。そこで感じたのは3人の「精神的一体感」
それは何故なのか。

この時、ゲイリーも病を患いかなりの大手術を行っていて、ディジョネットも長年のプレイで腰や関節の不調を抱えていました。リハーサルを経て3者がそれぞれ抱えるハンディキャップに気付き、尊重し合えたことで音楽を超えた繋がりができたからだとキースは語っています。

こうして奇しくも病気によってトリオの結束は強まり、音楽的深化を果たしたのでした。
そして現在でもこのトリオはジャズシーンの頂点に君臨するバンドとして、ピアノトリオのアイコンとして世界中のジャズファンに愛され続けているのです。

youtubeやデジタルフォーマットでの音楽配信が台頭してきた現代、音楽を聴く意義はひどく希薄になってしまったように感じます。
ただでさえ形のない音楽が形のないデータとして流通し、どこでも聴けるようになったことによって、作品のコンセプトや背景が掴みにくくなってしまったからです。

CDやLPをターンテーブルに乗せ、アートワークやライナーを眺めながら音に耳を傾ける。
こうしてはじめてその作品を聴いたと言えるのではないでしょうか。
「The melody at night , with you」ひとつとっても病気からの復帰、妻へのプレゼントといった背景を知ることによって印象深い、特別なモノになるでしょ。

ですのでこれまでに紹介してきた音楽で気に入ったものがあれば、ネットで済ませるのでは無くフィジカルな媒体で聴くことをおすすめします。
以上、5流ミュージシャンの小言でした。失礼いたしました。

次回でキース編まとめとなります。
個人的に好きな作品、奇声についてなどなど。
もうちょっとだけ続くんじゃ。

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癖毛系ジャズピアニスト、乳酸菌とビール、Bill Evansが好き。

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