・ジャズピアノ練習法(ソロピアノ・アドリブ・コード編)
・ビバップ常套句1377

ジャズピアノレッスン

マイルス・デイビスの名盤5選 | ジャズピアノのはじめかた

マイルス・デイビスは、ジャズの歴史において最も影響力のあるミュージシャンの一人です。彼は、ビバップ、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、フュージョンなど、様々なジャズのスタイルを革新し、数多くの名曲や名盤を残しました。彼の音楽は、今でも多くの人々に感動や刺激を与えています。このエッセイでは、マイルス・デイビスの膨大な作品の中から、私が特におすすめする名盤5枚を紹介します。

Kind of Blue (1959)

モード・ジャズの金字塔

マイルス・デイビスの代表作として、多くの人が挙げるであろうアルバムです。モード・ジャズと呼ばれるスタイルを確立した作品で、コード進行ではなく、音階や旋法に基づいて即興演奏を行うという革新的な手法を採用しました。マイルス・デイビスは、このアルバムのレコーディングの直前に、メンバーに簡単なスケッチを渡しただけで、ほとんどリハーサルをせずに録音に臨みました。その結果、生まれた音楽は、自由でありながらも美しく、深く、そして鮮やかです。ジャズのみならず、音楽全般においても、最も影響力のあるアルバムの一つと言えるでしょう。

収録曲

So What
Freddie Freeloader
Blue in Green
All Blues
Flamenco Sketches

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット)
ジョン・コルトレーン (テナー・サックス)
ジュリアン・キャノンボール・アダレイ (アルト・サックス)
ビル・エヴァンス (ピアノ)
ワイントン・ケリー (ピアノ)
ポール・チェンバース (ベース)
ジミー・コブ (ドラムス)

Bitches Brew (1970)

フュージョンの嚆矢

マイルス・デイビスは、1960年代後半から、ロックやファンクなどの要素を取り入れた実験的な音楽を追求し始めました。その頂点に達したのが、このアルバムです。エレクトリック・ピアノやエレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースなどの電化された楽器を多用し、複雑で重層的なリズムやサウンドを重ね合わせました。また、録音後にも、テープの切り貼りやオーバー・ダビングなどの編集を施し、音楽の構造やテクスチャーを変化させました。このアルバムは、ジャズとロックの融合という新しいジャンル、フュージョンの先駆けとなり、多くのミュージシャンに影響を与えました。

収録曲

Pharaoh’s Dance
Bitches Brew
Spanish Key
John McLaughlin
Miles Runs the Voodoo Down
Sanctuary

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット)
ウェイン・ショーター (ソプラノ・サックス)
ベニー・モーピン (ベース・クラリネット)
ジョー・ザヴィヌル (エレクトリック・ピアノ)
チック・コリア (エレクトリック・ピアノ)
ラリー・ヤング (エレクトリック・ピアノ)
ジョン・マクラフリン (エレクトリック・ギター)
デイヴ・ホランド (ベース)
ハーヴィー・ブルックス (エレクトリック・ベース)
リロイ・ジェンキンス (ヴァイオリン)
ジャック・ディジョネット (ドラムス)
ビリー・コブハム (ドラムス)
ルイス・ハワード (ドラムス)
ドン・アリアス (ドラムス)
ジュマ・サントス (パーカッション)
アイルト・モレイラ (パーカッション)

Sketches of Spain (1960)

スペイン音楽へのオマージュ

マイルス・デイビスは、ジャズだけでなく、他の音楽や文化にも興味を持っていました。このアルバムは、彼がスペイン音楽に魅了されたことを表現した作品です。アレンジャーのジル・エヴァンスと共に、スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」やイサーク・アルベニスの「イベリア組曲」などのクラシック音楽をジャズ風に編曲し、オーケストラと共演しました。マイルス・デイビスのトランペットは、スペインの伝統楽器であるフルーゲルホルンやフリスコルンなどを用いて、独特の音色や表現力を見せました。このアルバムは、ジャズとクラシック、そしてスペイン音楽という異なる音楽の融合という意味で、画期的な作品と言えるでしょう。

収録曲

Concierto de Aranjuez (Adagio)
Will o’ the Wisp
The Pan Piper
Saeta
Solea

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット、フルーゲルホルン、フリスコルン)
ジル・エヴァンス (アレンジ、指揮)
エディ・カーン (ベース)
ジミー・コブ (ドラムス)
ポール・チェンバース (チェロ)
エヴァンス・ミラー (フレンチ・ホルン)
ジョセフ・シンガー (フレンチ・ホルン)
ジョン・バーバー (チューバ)
テオ・マセロ (プロデューサー)
その他オーケストラのメンバー

Round About Midnight (1957)

ハード・バップの傑作

このアルバムは、マイルス・デイビスがコロムビア・レコードに移籍した最初のアルバムです。彼は、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズという、後に「ファースト・クインテット」と呼ばれることになるメンバーと共に、ハード・バップというスタイルを確立しました。ハード・バップとは、ビバップの複雑さとブルースやゴスペルの感情を組み合わせた音楽です。このアルバムでは、マイルス・デイビスのトランペットは、力強くも繊細で、コルトレーンのテナー・サックスは、激しくも情熱的で、ガーランドのピアノは、流麗でリラックスした演奏を聴かせます。このアルバムは、ハード・バップの傑作として、ジャズの歴史に残る名盤です。

収録曲

Round Midnight
Ah-Leu-Cha
All of You
Bye Bye Blackbird
Tadd’s Delight
Dear Old Stockholm

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット)
ジョン・コルトレーン (テナー・サックス)
レッド・ガーランド (ピアノ)
ポール・チェンバース (ベース)
フィリー・ジョー・ジョーンズ (ドラムス)

In a Silent Way (1969)

アンビエント・ジャズの先駆け

このアルバムは、マイルス・デイビスがエレクトリック・ジャズに転向した最初のアルバムです。彼は、ジョー・ザヴィヌル、チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョン・マクラフリン、デイヴ・ホランド、トニー・ウィリアムスという、若くて才能豊かなミュージシャンたちと共に、エレクトリック・ピアノやエレクトリック・ギターなどの楽器を導入しました。また、テオ・マセロというプロデューサーと協力して、録音後にも音楽の編集や加工を行いました。このアルバムでは、マイルス・デイビスのトランペットは、静かで穏やかで、しかし深みのある音を奏でます。音楽は、繰り返されるモチーフやリズムによって、瞑想的で幻想的な雰囲気を作り出します。このアルバムは、アンビエント・ジャズというジャンルの先駆けとなり、後の音楽に多大な影響を与えました。

収録曲

Shhh/Peaceful
In a Silent Way/It’s About That Time

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット)
ウェイン・ショーター (ソプラノ・サックス)
ジョー・ザヴィヌル (エレクトリック・ピアノ)
チック・コリア (エレクトリック・ピアノ)
ハービー・ハンコック (エレクトリック・ピアノ)
ジョン・マクラフリン (エレクトリック・ギター)
デイヴ・ホランド (ベース)
トニー・ウィリアムス (ドラムス)
テオ・マセロ (プロデューサー)

Birth of the Cool (1957)

クール・ジャズの誕生

このアルバムは、マイルス・デイビスが1949年から1950年にかけて録音した12曲をまとめたものです。彼は、ジル・エヴァンス、ジョン・ルイス、ジェリー・マリガンなどのミュージシャンたちと共に、ビバップの熱気や速さに対抗するように、冷静で落ち着いた音楽を作りました。この音楽は、クール・ジャズと呼ばれるようになりました。このアルバムでは、マイルス・デイビスのトランペットは、柔らかくて優雅で、しかし鋭い音を奏でます。音楽は、複雑で洗練されたハーモニーやアレンジによって、知的で美しい雰囲気を作り出します。このアルバムは、クール・ジャズの誕生という意味で、ジャズの歴史において重要な位置を占める名盤です。

収録曲

Move
Jeru
Moon Dreams
Venus de Milo
Budo
Deception
Godchild
Boplicity
Rocker
Israel
Rouge
Darn That Dream

メンバー

マイルス・デイビス (トランペット)
ジョン・ルイス (ピアノ)
ジェリー・マリガン (バリトン・サックス)
リー・コニッツ (アルト・サックス)
ジル・エヴァンス (ピアノ、アレンジ)
ジョン・カービー (ベース)
マックス・ローチ (ドラムス)
ケニー・ハギード (ベース)
ジョー・シュルマン (ベース)
アル・ヘイグ (ピアノ)
ジョニー・カロイシ (トロンボーン)
ジュニア・コリンズ (フレンチ・ホルン)
サンディ・シーゲルスタイン (フレンチ・ホルン)
ガンサー・シュラー (フレンチ・ホルン)
ビル・バーバー (チューバ)

まとめ

このエッセイでは、マイルス・デイビスの名盤5枚を紹介しました。彼は、ジャズの様々なスタイルを革新し、多くの名曲や名盤を残しました。彼の音楽は、今でも多くの人々に感動や刺激を与えています。マイルス・デイビスは、ジャズの歴史において最も影響力のあるミュージシャンの一人です。彼の音楽を聴いて、彼の才能や魅力に触れてみてください。